瀬戸内「 」資料館 へんこつ | Setouchi ” ” Museum Henkotsu

1 / 9
All Projects

2019年のヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展「cosmo-eggs」で協働した美術家の下道基行さんから、直島に移住して《瀬戸内「   」資料館》の館長を務めるから、空間づくりの手伝いをしてくれないかと声がかかった。「 」の中にはその都度、展示のテーマが入る。資料館の舞台となったのはパチンコ屋を改修してつくられた宮浦ギャラリー六区(設計:西沢大良)の建物だった。瀬戸内の文化や歴史を独自の視点で描き出すアーカイブ活動が始まった。資料館は福武財団の職員も含めた地元の人たちが集う居場所になっていった。この活動が隣の空き家(元・焼肉へんこつ苑)へ展開し、窯工研と呼ばれる陶芸教室、直島の小・中学生にアートを体験できる子ども塾に繋がっていった。溢れ出していた資料館の活動は、宮浦ギャラリー六区での「展示収蔵」と元・焼肉へんこつ苑での「研究」のふたつの活動に位置付け直され、本格的なラボラトリーとして機能させることになった。

そこで障害となったのが既存の建物の雨漏りと躯体の劣化だった。限られた予算で建物を健全な状態にするために、雨漏りの原因のパラペットをなくし、屋根を修繕し、室内を照らす天窓を追加した。低い天井高さを解消するために2階の床を撤去し、伸び伸びと使える天井高さを確保し、鉄骨柱の脇に木造の耐震壁、外壁沿いに筋交を設置し、がらんどうとなった2階部分にステンレスワイヤーを四方八方に張り巡らせ、建物のフレームを補強した。左右対称に配置された耐震壁の等間隔のリズムは窓の反復を強調し、この壁の700mmの奥行は棚やベンチの寸法に比べて深く、日常的な寸法からやや逸脱している。その壁を手がかりに机や棚や腰掛がDIYでつくり付けられていった。その後、無断熱の建物の中に冷暖房が機能するよう中空ポリカーボネート板で覆った部屋(島民ギャラリー)が追加された。