JIA MAGAZINE 366

見えないもののネットワークをかたちにする

表紙のドローイングは、「西大井のあな」という私たちの自宅兼事務所のスケッチの一部です。
私たちはバブル期に建てられた 4 階建て鉄骨造の中古住宅と土地を購入し、 解体直後に引っ越して住みながら少しずつ改修し続けています。1 階は自分たちの設計事務所、2 階は畳のゲストルーム、3 階は居間、4 階は寝室です。積層するスラブに「あな」を開けることで、各階で異なる生活の場面を繋ぎ、立体 的な広がりを得たいと考えました。また「あな」を介して既存の天窓から薄暗 かった階段まわりに光が届きました。倉庫だった 1 階を事務所にするため、無断熱の ALCの外壁とコンクリート基礎に断熱を付加しました。また床や壁の 仕上げに廃材となった檜や杉の縁甲板を再利用しました。角にある鉄骨柱の根元が雨水の浸入で錆びてボロボロに朽ちていたため、鉄筋コンクリートで根巻きし、その周りにベンチを造り付けました。屋上には太陽熱集熱パネルを設置し、床暖房や給湯に利用する予定でしたが、4 階から1 階までの熱のロスが大きいと考え、昨年の冬にペレットストーブを 1 階に設置し、大鋸屑などを固めた木ペレットを燃料に暖房しています。かつて商店や町工場として使われていた周囲の建物はシャッターで閉ざされていますが、こうした職住一体の住宅型 は地域のポテンシャルになると考え、街から仕事場が見え、路地とつながる大きな開口(樹脂サッシ+ペアガラス)を設けました。土間コンクリートで塞が れた駐車場を少しずつはつり、土に戻しました。この土壌を健全な状態にするために、溝を掘って竹炭と枯れ枝を敷き、水と空気(酸素)が土中に入り込むようにし、腐葉土や生ゴミで作ったコンポストを土に混ぜ合わせ、マウンド状にして、モミジとコナラを植えました。屋上ではキュウリ、トマト、ゴーヤなどを育てています。将来的には発電パネルを屋上に設置して、太陽のエネ ルギーで電力供給を行いたいと考えています。このように「西大井のあな」は、日々変化・成長する建築です。