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身の丈の部屋を作ってみよう。

現代の人々の暮らしはエネルギーもマテリアルも使いすぎている。材料は身の回りにあるものや、手軽に手に入るもの、解体現場で捨てられたものを利用する。近くの農家で出てくる籾殻や藁をもらってくる。一人でも持ち運び容易で、特別な道具や技術がなくても加工できる工法で作れるようにする。時間はかかるけれども一日の過ごし方を想像しながらどんな設えが良いか思案するのは楽しい。身の丈サイズで、自分で作れて、エコロジカルフットプリントの小さい建築だ。

土壌に負担をかけないようにコンクリート基礎ではなく、松杭の上に木造の架構を載せる。表面積が小さく体積が大きい球体にから発想した八角形の入母屋の形の架構である。仕事をするにはパソコンやスマホが必要だ。最低限のエネルギーを自給できるように太陽光発電パネルを南側に載せる。東側の小さな机にノートパソコンを広げて外を眺めて仕事ができる。曇りや雨の日は小さなバッテリーがあれば事足りる。雨が続いて電力がなくなったら仕事はおしまい。太陽に合わせて暮らせばいい。南側には反射板で太陽光を集めて熱を発生させるソーラークッカーがある。お日様の力で沸かしたコーヒーでの一服は格別だ。パソコン作業に疲れたら横になって頭を休めよう。寝転ぶと丸窓からは外の景色が見える。北側のバイオトイレには天窓があり、口から入った食べ物がお尻の穴から糞便となって出て土に戻っていく。用を足す時に空と身体と地球が一体的に感じられるのだ。リモート会議の合間に梯子で庭に降りてみる。屋根から集められた雨水を畑の野菜にあげて気分転換。隣のおばさんが育ち具合を尋ねてくる。トイレの肥やしのはたらきがすこぶる良い。寒いのは嫌いなので部屋はきちんと断熱したい。毎日食べる米の副産物である籾殻を燻して断熱に使えば、無料でゴミも減らせて一石二鳥だ。自分で作ったから修理や更新もなんてことはない。この部屋は身の丈サイズだが、太陽や地球を感じられる、大きな部屋なのだ。