結庵 | Hermitage of the knot

1 / 14
All Projects

棚田で収穫した稲藁で庵をつくりたいという好奇心から始まった。稲藁葺の施工性と水はけに適した勾配で小さな合掌造となった。基礎は石場建てである。スクリューウェイト試験で約30kN/m2の地耐力が確認され、安全性を見込んで3尺(910mm)の間隔で16箇所に束を建てた。地業は、スコップで穴を堀り、表面が炭化した焼き松杭を打ち込み、砕石と割栗石をてん圧し、御影石(墓石の残材)の礎石を据えた。手で運べて貫穴を開けられる120mm角の杉材で1400mmの高さの床組をつくり、その上に又首を組んだ。仕口は伝統構法の木組である。天然乾燥の杉材に墨付・刻みを施し、建前を大工の指導をもとに学生が行なった。貫を入れて楔を打つと驚くほど頑丈になる。稲藁葺では、昨年収穫されて保管された藁束を使って苫をつくり、登梁にエツリ(篠竹や真竹)を藁縄やシュロ縄で固定する。箱結びや男結びで力を込めて結んでいく。切妻の頂部は藁束で棟納め、防水のためガルバ仕上げの箱棟を載せた。ゼンパーが述べた建築の四要素の一つ「被覆」は、植物の繊維や枝を編み込んだもので、原始住居の本質要素である。この「結ぶ」という行為の高度な身体性と知の蓄積に感銘を受け、この小屋を「結庵」と名付けた。

設計・施工:東京科学大学・東京都立大学 能作文徳研究室
大工:藤本工務店
屋根:牧田沙弥香
建具:石川製作所
設計期間:2022年5月~2024年9月
施工期間:2023年6月~2024年10月